「氷風穴の里」と書かれた白いのぼり旗と、木立の中の小さな鳥居。手前にはベンチとエールくんのマスコット

夏の小諸で、涼しく過ごせるお出かけ先ってないかな?

それなら「氷風穴(こおりふうけつ)」がおすすめ!外が真夏でも、穴の中はなんと2〜5℃なんですよ

氷風穴(こおりふうけつ)は、小諸市の氷(こおり)集落にある“天然の冷蔵庫”です。山の斜面から冷たい風が吹き出していて、外の気温が25℃を超える真夏でも、穴の中は2〜5℃くらいをキープ。江戸時代から氷や食べものを貯蔵してきた、歴史のあるスポットなんですよ。今回は、涼しさと歴史の両方を楽しめる氷風穴を、写真たっぷりでご紹介します。

目次

真夏でも2〜5℃!天然の“冷蔵庫”のしくみ

氷風穴は、山の斜面にある岩の隙間を通り抜けてきた冷たい空気が、外へ吹き出しているスポットです。夏でもひんやりとした風が出ていて、まるで天然のクーラー。かつては冷風を逃がさないように萱(かや)で覆った小屋にしていたそうで、いまも石積みの風穴が山の中にいくつも残っています。

どのくらい涼しいのか、外と穴の中の温度計を見くらべてみました。この日、外は約27℃。それが、風穴のそばの温度計では約10℃。その差はおよそ17℃にもなりました。いちばん冷える風穴では2〜5℃まで下がるそうで、まさに“天然の冷蔵庫”という言葉がぴったりです。

氷風穴の入口に置かれた木製の箱の上の温湿度計。外の気温は約27℃を示している。箱には氷風穴の焼印とエールくん
外は約27℃
石積みの風穴の中にかけられた温度計と、天然の冷蔵庫の風穴を紹介するラミネート写真。エールくんが手前に
風穴の中は約10℃

これがもう、実際に体験するとほんとうにびっくり!さっきまで汗ばむ暑さだったのに、風穴に近づいたとたん、まるで冷蔵庫を開けたようなひんやりした空気がふわ〜っと流れてきて、思わず「なんで〜!?」と声が出てしまうほど。この気温差は、言葉で聞くよりぜったい体で感じるのがおすすめ。暑い夏こそ、ぜひ一度この“ひんやり”を味わってみてほしいんです。

❄️ なんで夏なのに冷たい風が出るの?
現地の看板によると、氷風穴は尾根と尾根のあいだから冷たい風が噴き出す穴。山にしみ込んだ空気が、地中や岩と岩のすき間を通りぬけるうちにひんやり冷やされて、外へ出てくるしくみなんだそうです。だから電気を使わなくても、真夏でもクーラーみたいな冷たい風が吹き出すんですね。氷集落の風穴群は、この冷風を逃がさないように萱(かや)で覆って大切に使ってきました。

湿度も年間を通してほぼ100%近くで安定しています。この「低温・高湿・温度差が少ない」という環境が、あとで紹介する蚕種(さんしゅ=蚕のたまご)や食べものの貯蔵にぴったりだったんですね。

ここに貯蔵した氷は、藩主への献上品だった

森の中に立つ「氷風穴」の解説看板。明治41年(1908年)の蚕種入穴の光景の古写真と、現在の風穴の写真が並ぶ

氷風穴の歴史は、とても古いんです。今から約300年前・江戸時代(元禄年間)の文献には、「池から切り出した天然の氷を風穴に貯蔵し、藩主へ献上した」という記録が残されています。冬のあいだに池から切り出した氷を運び込み、夏まで保存していたんですね。冷蔵庫のない時代、天然の冷気で氷を保存できる風穴は、とても貴重な存在でした。

現地の看板には、当時のようすや歴史がくわしく紹介されています。散策しながら読むと、風穴とともに歩んできた氷集落の歴史が見えてきますよ。

明治には“全国一”!蚕種貯蔵の一大拠点に

「小諸ふるさと遺産認定証 氷風穴群」と書かれた案内看板。天然の冷蔵庫としての風穴の歴史が説明されている

氷風穴が大きく発展したのは明治時代。明治7年、地元の前田信右衛門(まえだ しんえもん)が、風穴を利用した蚕種貯蔵業をはじめました。「氷風穴同益社(こおりふうけつどうえきしゃ)」を創設し、明治から昭和のはじめまで続きます。

当時、全国には蚕種を貯蔵する風穴が300基ほどありました。現地の看板によると、そのなかでも小諸の風穴は、扱った蚕種の量(貯蔵高)で全国一の実績があったとのこと。関東一円をはじめ、近畿・四国・中国・九州など、全国から依頼が寄せられていたというから驚きです。

蚕種(さんしゅ)ってなに?
蚕種とは、絹(きぬ)をつくる蚕(かいこ)のたまごのこと。蚕は温度によって生まれる時期が変わるため、涼しい風穴でたまごを保管して生まれる時期を調整すると、それまで年1回だった養蚕が年に何回もできるようになりました。氷風穴は、日本の絹産業を支える大切な役割を果たしていたんですね。

いまも活躍!りんご・漬物・日本酒の貯蔵庫

山の斜面に石を積み上げてつくられた氷風穴群。段々になった石積みの間から冷気が出てくる。手前にエールくん

最盛期には14もあった氷風穴。現在は5つの風穴が残っていて、いまでも使われている風穴があります。石を積み上げてつくられた風穴のつくりは、じっくり見るとほんとうに立派。長い年月、地域の暮らしを支えてきたことが伝わってきます。

現在は、りんごや漬物、日本酒などの保存に活用されています。電気を使わずに一年中ひんやりを保てる風穴は、まさに自然のエネルギーを生かした知恵の結晶ですね。

見学のお楽しみ「第五号風穴(温度体感風穴)」

石積みの「第五号風穴(温度体感風穴)」の入口。順路図の看板が立ち、温度の変化を体感できると案内されている

氷集落の遊歩道を歩いていくと、「第五号風穴(温度体感風穴)」があります。ここは、その名のとおり温度の変化を体で感じられる風穴。順路にそって進むと、だんだんとひんやりしてくるのがわかって、夏の暑さがすーっと引いていきます。

木々に囲まれた氷風穴の遊歩道。石積みの風穴のそばの小道を散策する人のうしろ姿

緑に囲まれた遊歩道は、歩いているだけでも気持ちいい森さんぽコース。看板を読みながら、風穴をひとつずつめぐっていくのも楽しいですよ。

🌲 散策のときの服装は?
風穴のまわりは夏でもひんやりするので、はおれる上着があると安心。足もとは土や石の道なので、歩きやすい靴がおすすめです。
それから、取材した8月上旬は蚊がけっこういました。夏に行くなら虫よけを持っていくと安心ですよ。

もうひとつの有名な風穴「荒船風穴」との違い

じつは、氷風穴と同じ“蚕種貯蔵の風穴”は各地にありました。なかでも有名なのが、群馬県下仁田町の荒船風穴(あらふねふうけつ)。こちらは世界文化遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産で、国の史跡にも指定された、施設の規模では日本一とされる蚕種貯蔵施設です。

ただ、荒船風穴は貴重な文化遺産として大切に保存されているため、石積みの中に入って見学することはできません(保護と安全確保のため、外から見学するスタイル)。とはいえ見学者広場には冷風体験室があって、あの冷たさ自体はちゃんと味わえるようになっています。

その点、小諸の氷風穴は、第五号風穴(温度体感風穴)の順路を歩きながら、だんだん涼しくなっていく変化そのものを追えるのが面白いところ。氷風穴が“扱った量”で全国一なら、荒船風穴は“施設の大きさ”で日本一。「見て守る」荒船風穴と、「歩いて体感する」氷風穴——どちらも日本の絹産業を支えた大切な風穴で、たのしみ方がそれぞれ違うんですね。

氷風穴の基本情報

「氷風穴駐車場」と書かれた木製の看板。上にエールくんのマスコットがちょこんとのっている
氷風穴の御案内マップ看板。風穴群の位置や遊歩道のルートがイラストで描かれている
場所長野県小諸市 氷(こおり)集落
見学見学自由
アクセス小諸駅・小諸ICから車で約10分/駐車場あり
問い合わせ氷風穴の里保存会 0267-23-0397 / 0267-22-6136 / 0267-23-2337

見学できる時期や見学のしかた、ガイドの申込などは変わることがあります。お出かけ前に、こもろ観光局の公式サイトや保存会で最新の情報をご確認くださいね。

まとめ

氷風穴の森の中にある、石造りの小さな祠(ほこら)と木の鳥居

外が真夏でも2〜5℃という、天然の冷蔵庫「氷風穴」。江戸時代の氷の貯蔵から、明治の“全国一”の蚕種貯蔵、そして今も続くりんごや日本酒の保存まで、涼しさと歴史のロマンがぎゅっと詰まったスポットです。

森の遊歩道を歩けば、ひんやり気持ちいい避暑体験もできて、夏の小諸さんぽにぴったり。暑い日には、ぜひ天然クーラーの氷風穴へ出かけてみてくださいね。

車がなくても大丈夫。小諸駅から周遊バスに乗って「布引温泉小諸」で降りれば、そこから歩いて15分ほどで氷風穴に行けます。電動アシスト自転車なら、小諸駅から約30分。小諸のまち歩きとあわせて楽しめるので、チェックしてみてくださいね。

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