緑の木々に囲まれた崖の中腹に建つ布引観音の朱塗りの観音堂を、スマホで撮影する女性

布引観音って、ドライブのついでにサッと立ち寄れる観光地……ですよね?

サっとは難しいかも…。軽登山です。でも、運が良ければ猫に会えます

長野県小諸市の「布引観音(布引山 釈尊寺)」は、断崖絶壁にお堂が建つ、まるで清水の舞台のようなお寺です。ただし駐車場からお堂までは片道約20分の本気の山道。スニーカー以上の靴は必須です。そのぶん、たどり着いたときの景色と、運がよければ会える人懐っこい猫が、しっかりご褒美になっていました。(取材日:2026年7月28日)


目次

駐車場は、ふもとに停めるのが正解です

ここを間違えるとスタート地点でつまずきます。

Google マップで「布引観音」を調べると、「釈尊寺一般車駐車場」という、お堂のすぐ近くまで車で上がれる駐車場が出てきます。近いのは事実です。ただし、そこへ至る布引林道は道幅が狭く、対向車とのすれ違いが困難な山道。こもろ観光局も「車をこする人、スリップする人続出!オススメしません!」と書いています。

初めて行く方は、ふもとの「布引観音参道駐車場」(無料)に停めて、参道を歩いて登るのが正解です。Google マップも、この名前で検索してください。ただし駐車線が整然と引かれているわけではないので、着いたら「どこに停めよう」と少し迷いました。

サイクリングの方は、こもろ観光局が出している布引観音ルートマップ(PDF)に推奨ルートが載っているので、出かける前に一度見ておくと安心です。自転車は小諸駅のレンタサイクル「こもクル」で借りられます。電動アシストがあるので、この坂でもなんとかなります。

参道は徒歩20分。「散歩」じゃなくて「軽登山」です

布引観音参道駐車場にある、参道の見どころと所要時間が描かれた案内図
駐車場にある案内図。参道の見どころが全部載っているので、登る前に読んでおくと楽しさが倍増します

駐車場に立っている案内図には「徒歩で約20分」とあります。実際、写真を撮りながらのんびり登って25分ほどでした。時間だけ見ると大したことなさそうですが、問題は中身です。

木々に囲まれた布引観音の参道入口。石碑と石段、手前に編みぐるみのエールくん
ここが入口。この時点でもう「山」の空気です

石段を上がって少し進むと、道はすぐに山道になります。そこそこの急坂で、路面は土と石。前日に雨が降っていればぬかるみます。この日も何か所か、足を置く場所を選びながら歩きました。

サンダル・ヒール・革靴は本当にやめたほうがいいです。最低でもスニーカー、できれば「今日は軽く山に登る」くらいのつもりの服装と靴で来てください。

ただ、しんどいばかりかというと、まったくそんなことはなくて。
ところどころに、思わず足が止まる岩や滝があります。

参道の途中、岩の下に細く流れ落ちる滝と、手前のエールくん

案内図によると、登る順に布引二段滝、馬岩、見守り地蔵、牛岩、善光寺穴と続きます。馬岩は馬が駆ける姿に、牛岩は牛の姿に見えるのだそうですが……正直、どれがどれなのかは自信がありません。分かる方はぜひ探してみてください。

参道の見守り地蔵の少し先にある大きな牛岩と、牛岩の説明板
牛が…います?

「牛に引かれて善光寺参り」の伝説の舞台

駐車場そばに立つ、牛に引かれて善光寺参りの伝説を説明した木製の案内板
駐車場そばの案内板。この伝説を読んでから登ると、道中の見え方が変わります

ことわざとして知られる「牛に引かれて善光寺参り」。この話の舞台が、ここ布引観音です。

案内板をざっくり要約すると、こんな話です。

牛に引かれて善光寺参りの4コマ漫画。1.信心の薄いお婆さんが千曲川で布をさらしていた。2.突然現れた牛が、布を角に引っかけて走り去る。3.牛を追いかけているうちに、善光寺の境内へたどり着く。4.一夜を過ごしたお婆さんは改心し、信心深くなった。
おばあさんの体力すごくないですか

参道の途中には「善光寺穴」という穴があります。駐車場の案内図によると、長野の善光寺まで通じていると云われているのだとか。昔、善光寺が火事になったとき、この穴から煙が出たとかなんとか。

サクコモ編集部員

小諸から長野まで、直線でも50km以上あるんですけど……。こういう話、大好きです

登りきるとそこは、小諸の清水の舞台

登りきって境内に入ると、立派なしだれ桜の木が迎えてくれます。

布引観音の境内。右手に青葉のしだれ桜の大木
右手の大きな木が、そのしだれ桜。7月なので、見事な青葉です

ちなみに、温湿度計を持って行ったので測ってみました。7月下旬の午前11時すぎで27.5℃/湿度69%。涼しい、とまでは言いません。参考までに、この日の出発前に会社で計ったときは30℃でした(計測場所も時間も違うので、あくまで参考です)。木陰と谷風のぶんは、体感でもはっきりさわやかでした。

布引観音のお堂の下で温湿度計を持って計測した様子。27.5℃・湿度69%
お堂の下で計測。27.5℃/湿度69%
岩屋の前にずらりと並ぶ、赤い帽子をかぶったお地蔵さま
赤いお帽子のお地蔵さまがずらり。ここだけ空気がひんやりしています

湿度が高めなので、汗はかきます。夏に行くなら飲み物は必ず持って登ってください。参道の途中に自販機はありません。

崖の上の観音堂は、写真では伝わらない高度感

岩に食い込むように建つ布引観音の朱塗りの観音堂と軒下の彫刻
岩に食い込むように建っています。彫刻がまた見事

さらに少し歩けば観音堂に到着。岩の下にめり込むようにして、朱塗りのお堂が建っています。軒下には龍と獅子の彫刻。近くで見上げると、思っていた何倍も細かい仕事です。

お堂の奥の岩屋に納められている「宮殿(くうでん)」は国の重要文化財(1949年5月30日指定)。正嘉二年(1258年)の建立で、鎌倉時代のものです。

戦国時代、武田信玄の兵火でお寺の建物は焼けています。それでも、岩屋の奥にあったこの宮殿だけは焼けずに残ったそうです。

で、この舞台、意外と高度感があります。

観音堂の舞台から見下ろした緑の谷と境内の屋根、手すりの上のエールくん

案内図には、参道の不動滝から眺める観音堂が「京都の清水寺を想いだされる」とありました。たしかに構造はそっくりです。手すりの向こうがほぼ崖下。覗き込むと、吸い込まれそうでぞわぞわします。写真だとどうしても平坦に写ってしまうので、これは行った人にしか分からない感覚だと思います。

布引観音の境内の池に咲く白い蓮の花
境内の池では蓮が咲いていました。7月下旬がちょうど見ごろ

そして、本題です。看板猫がいます

お待たせしました。ここからが、この記事で一番お伝えしたいことです。

布引観音の境内で紫陽花を背に座る看板猫
紫陽花を背にして、ちょこん。完全に「待ってた」の顔

境内を歩いていたら、紫陽花の茂みの前に猫が座っていました。逃げません。むしろ、こっちをじーっと見ています。

おそるおそる近づいたら、向こうから寄ってきました。そして、なでさせてくれました。さらには、道中ずっと連れ歩いていたマスコットのエールくんにまで、すりすりしてくれる始末です。

その様子はインスタにアップしています!

山道20分の疲れ、この30秒で全部チャラになりました

山を登って、汗をかいて、絶景を見て、最後に猫をなでさせてもらう。最高のリフレッシュです。

とはいえ、いつでも会えるとは限りません。あくまで「運がよければ」の存在なので、会えなかったときのために、景色と歴史のほうもしっかり楽しむ心づもりで行ってください。会えたら、その日はかなりラッキーな日です。

この日、社務所は無人でした。御用の方は呼び鈴で

人の姿がない布引観音の社務所
静かな社務所。この日は人の姿がありませんでした

御朱印などを頂きたい方向けの情報を。社務所には常時人がいるわけではないようで、この日は窓口は閉まっていました。

社務所の入口に貼られた「御用の方は呼び鈴を押して下さい」の貼り紙と呼び鈴
「御用の方は呼び鈴を押して下さい」。ボタンは戸の左側です

入口に「御用の方は呼び鈴を押して下さい」という貼り紙と、呼び鈴のボタンがあります。英語と中国語の案内も添えられていました。「電話応対中の時は出られない時があります。時間を置いてあらためてお呼び下さい」とも書かれているので、反応がなくてもしばらく待ってからもう一度、が正解のようです。

そして下山開始15秒で、豪雨

最後に、教訓として書き残しておきます。

猫にじゅうぶん癒され、いい気分で下山を始めた直後のことでした。空が急に暗くなったな、と思った次の瞬間には、ばちばちと本気の雨。あっという間にびしょ濡れです。

登りでぬかるんでいた場所は、当然もっとぬかるみます。滑らないように一歩ずつ下りながら、「そうだよな、山だもんな」と、当たり前のことを思い出していました。

夏場は特に、お天気が不安なときは、レインウェアを必ず持って行ってください。

春は、しだれ桜がすごいらしい

境内には、立派なしだれ桜の木があります。今回は夏だったので枝ぶりを眺めるだけでしたが、春には見事な花をつけるのだそうです。

断崖の朱塗りのお堂と、しだれ桜。想像するだけでかなりのものです。案内図によると、参道の布引二段滝は秋には紅葉に包まれ、冬は氷滝になるそうです。季節を変えて何度でも来られる場所ですね。

春にまた登ります。……猫にも、また会いたいので

行く前に知っておきたい基本情報

項目内容
名称布引観音(布引山 釈尊寺)
所在地長野県小諸市大久保2250
駐車場ふもとの布引観音参道駐車場(無料)。Google マップもこの名前で検索
参道の所要時間片道 約20分(案内図表記)/写真を撮りながらで約25分
滞在時間の目安往復+参拝で約1時間
服装・靴スニーカー以上必須。急坂・ぬかるみあり。冬季は凍結する箇所もあるため滑り止めを
持ち物飲み物(参道に自販機なし)、雨具
トイレ参道駐車場にあり(冬季閉鎖)
社務所取材日(平日午前)は無人。御用の方は呼び鈴を押す
見どころ観音堂(断崖の舞台)、国指定重要文化財「釈尊寺観音堂宮殿」(正嘉2年/1258年建立)、善光寺穴、馬岩・牛岩、布引二段滝、白山社、しだれ桜(春)
問い合わせ小諸市観光案内所 0267-22-0568
ルートマップこもろ観光局 布引観音ルートマップ(PDF)
取材日2026年7月28日(火)10:55〜11:55

「小諸の観光スポット」として名前は聞いていたものの、正直、ここまで山だとは思っていませんでした。でも登ってよかったです。断崖のお堂も、岩のトンネルも、善光寺まで通じているという穴の話も、そして猫も!全部ひっくるめて「わざわざ行く価値のある場所」でした。

靴だけはちゃんとしたものを履いて、飲み物と雨具を持って、ぜひ登ってみてください。猫に会えたら、ぜひそっとなでさせてもらってください。

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